CAT’S


 何を隠そう、キャッツは僕の一番のお気に入りのミュージカルである。前の大阪公演の時に4回、今の大阪公演で4回、5月には今公演5回目のチケットを取ってある。劇団四季の会員になったきっかけもこのミュージカルなのだ。
 そういう訳で、オペラ座の怪人以上にこちらをはずすわけには行かなかった。取ってある席は前から2列目、ほとんど真ん中の席だ。



 キャッツをしている The New London Theatre。
 下の所に、「残り4ヶ月。5月11日、ファイナル公演」と書かれている。20数年続き、「21世紀に続くただ一つのミュージカル」と言われたロンドンキャッツがその幕を下ろす。ファンとしては寂しい限りだ。にっくきテロというところだろうか。今回、観劇が「間に合った〜」という気分である。



 前から2番目、通路際の席である。驚いたのは客席と舞台が日本より近いのだ。僕は通路すぐ横だったので、通路から降りなくてはならなかった。隙間がないのである。おかげでそこでダンスをされるとしっぽが当たらないように逃げなくてはいけないほどである。
 開演前にインフォメーションが流れる。英語で、その次は日本語で、最後はフランス語で。見に行く日本人が多いんだろうな〜。僕もだけど。

 さて、肝心の中身であるが、正直言って前半が終わるくらいまでは「キャッツに関しては劇団四季の方が上だな」と思っていた。
 それは、踊りである。四季のダンスは全体で統制を取り激しくダンスをする。しかし、ロンドンキャッツの場合、踊りはそれ程でもない。考えてみれば当たり前の事である。マイクを使わず生の声で劇場に響かせようと思ったら、とてもじゃないがゼイゼイ言うほどのダンスが出来るわけがない。あの四季のダンスのすばらしさはマイクという武器があって初めて出来るのであろう。
 ダンスは全体というよりは個人技の連続である。バク転や宙返りなど、素晴らしい技を披露するが、全体としてはまとめていない。
 しかし、一匹一匹の猫たちの表現力はやっぱりすごい。
 実は、見ていてすごく気に入った猫が2匹いた。ランペルティーザーともう一匹は名前が分からない。僕はジェミマとデミータの区別がつかないため、どっちかだろうと思っていた。そして、劇団四季版を見ていてのお気に入り猫、シラバブが見あたらない。黄色のかわいい猫なのだが、いないのだ。はて?と思っていると後半の初め、メモリーのメロディーに乗せてその猫が歌い出した。なんと、その猫がシラバブだったのである。どうりではしゃぎ回っていると思った。四季と違って黒を基調に赤と白の模様が入っていた。
 猫たちには遠慮が無く、手が空くとすぐに客席に降りてきてはお客にちょっかいを出す。僕の所にもランペルティーザーがじゃれに来た。通路向かいに座っていた日本人の女性3人組は大げさに逃げるものだから調子に乗って何度も猫がよってきて、そのたびに段々と奥の方まで乗り出すようにしていた。

 やがてクライマックス、グリザベラのメモリーの独唱が始まり、オーリュドトロノミーの歌が始まる。この頃になると僕はすごく楽しい気分になっているのに気が付いた。そう、やっぱり感情を乗せさせたらこちらの方が上だ。
 ただ、キャッツで感じたのは、ロンドンキャッツと劇団四季のキャッツはもはや別物だという事だ。四季は全員で素晴らしいダンスを見せてくれる。こちらはひとりひとりの技が次々と出てくるが全体でどうという事はない。どちらがいいかは歌を聴きに来るのか、ダンスを見に来るのかで違うだろう。
 クロークに服を取りに行くと、後ろの人が「オペラ座の怪人よりキャッツの方がいいね。」と言っていた。(もちろん英語で)


 オペラ座の怪人の時は終わったらさっさとみんな引き返していたが、キャッツの後はごらんの通り、なかなか帰ろうとはしないようだった。






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