夜のチェンマイ


 という程、うろついた訳ではなく、2軒、お店に行っただけなのだが。
 フロントにキーを預けると、ロビーから外へでる。待ち合わせの店まで少し距離があるので、出来ればトゥクトゥクではなく普通の車で行きたいなと考え、ドアボーイに「タクシーはどうやってつかまえるのか?」と聞くと、道路の方を向いて両手を振って、「タクシー!」と呼ぶ。そして・・・・例によってトゥクトゥクがやってきた・・・・。確かに頭には「TAXE」と書いてあるんだけどね・・・・。
 まあ、仕方がないので、チェンマイの地図を見せて、教えて貰った店の名前、BKを伝えると、「ショッピング?」と聞いてきた。「ノー、レストラン。」「OK。」この時、運転手さんが50バーツと言ったように思ったので、「フィフティバーツ?」と聞き返すと、うなずく。高いわけではないのでそのまま乗り込むと、夜のチェンマイの街を走り出した。
 チェンマイは堀で囲まれた、旧市街地と、その周り、特にチェンマイ駅のある東側に広がっている新市街があり、エンプレスホテルは新市街の南の方へ位置する。道は、旧市街の堀を挟んで外側が時計回りに、内側が反時計回りの一方通行だ。トゥクトゥクは堀の外側を回り、旧市街地の西側道路沿いにあるレストランのBKを探しながら、少しスピードを落として走る。やがて、BKの看板を見つけて停まる。50バーツ札を出すと、首を振って何か言う。3度くらい聞いて、やっと、「80バーツ」と言っているのが解った。80バーツ渡すと、にっこり笑って、「コップ クーン カップ」と言って走り去った。







 BKのレストラン。駐車場の入り口から店に向かって写真を撮った。



 時間は丁度、19時30分。レストランは屋外に机とイスを並べ、屋根を付けたような作りで、中が見える。出入りは特にチェックしておらず、勝手に出入りが出来る。中を一通り探して、Fさんが先に来ていない事を確認すると、店の入り口でFさんを待つ事にした。
 しばらく待ってもなかなか姿を現さない。このレストランは、焼き肉の食べ放題の店なので、最低、30分は時間が欲しい。21時にアイリッシュパブに行くのなら、20時が限界かなと思いながら待っていたが、結局、19時55分くらいになって、先に入る事にした。中に入ってもシステムが良く解らないので、そのあたりで机を片づけている従業員をつかまえて「エクスキューズミー」と言うと、困った顔をして、奥の方を指さす。そっちに行っても特に何もない。すると、さっきの従業員が別の従業員に声をかけ、その従業員が、「一人?」と聞いてきた。どうやら、英語の出来る従業員を指さしたようだった。席は好きな所に座って従業員に言うと、用意をしてくれるようだ。入り口が見える席に座ると、すぐに一人分の食器が置かれた。その時、入り口にFさんが姿を現した。
 従業員に「もう一人分」と言うと、Fさんが、「いや、走ってきて、気分が悪いんで食べられない。」といい、結局、僕一人で食べて、その間、Fさんは待っている事になった。







 食べ放題なので、自分で適当に取ってきて食べる。鉄板の下には炭が入っていて、足りなければ言えばまた炭を足してくれる。
 このお店、Nap Tourのご主人さんの話では、品揃えが豊富との事でした。確かに、豚肉だけではなく、鶏肉もあり、フルーツもあり、と、結構楽しめる。
 人気の店らしく、Fさんを待っている間も、ひっきりなしに人が出入りしていた。







 時間を気にしている僕に、「別に21時丁度に行かなくても、大丈夫。」と言ってくれたFさんの言葉に安心し、フルーツまでしっかり食べた。

 チェックを済ませると、表に出る。アイリッシュパブは旧市街の中なので、堀の内側でトゥクトゥクをつかまえるべく探すが、走っている台数が少ない。ようやく走ってきた一台を停め、地図を見せてFさんが値段を聞く。「100バーツ」との答えにFさんは即効で「バイバイ」と言ってトゥクトゥクから離れた。確かに40〜50バーツくらいだろうと思っていたので、馬鹿みたいに高いが、これから値切るのかと思いきや、すぐに離れてしまった。Fさんいわく、「あんな連中には一銭だって払いたくない。」とのお話だった。
 ちょっと離れた所でソンテウを見つけ、地図を見せて交渉すると、「2人で40バーツ」と言ってくる。Fさんが「30バーツ」と言うと、OKをしたので乗り込む。ソンテウは本来、旧市街を一人10バーツでくるくる回っている乗り合いタクシーだが、最近はガソリンが高くなり、本来の10バーツでは無く、交渉するのが一般的になっていると何かのガイドブックに書いていた。まあ、一人15バーツならいいところか。
 5分ほど走って、目的のアイリッシュパブに到着した。












 さすがデジカメの時代。みんなでトレッキングの時の写真を見ながら話が弾む。
 僕はノートPCを持っていっていたので、その場で何枚かCDを焼いてデーターの交換をした。
 いつもは殆ど自分の写真が無いのだが、おかげで今回は結構、自分が写っている写真が手に入った。














 左がスロヴェニア人のSさん、右がアメリカ人のAさん。このAさん、実におしゃべり好き。









 3日間、同じ体験をしてきた事で、話が弾む。僕以外は皆さん、バックパッカーのようで、シンガポールやその他の地域での話も色々出てくる。僕はFさんに助けて貰いながら、何とかあちこち、会話に参加していた。うまく伝えられないで「ごめんなさい、英語が下手で。」と言うと、Aさんもイギリス人のEさんも、「ノー。私は日本語をしゃべられない。あなたの英語はとても上手だ。」と言ってくれた。でも、日本語は海外に出ると全く役に立たないので、やっぱり世界のスタンダード、英語がしゃべられるかどうかは大きいのだが・・・。
 チェンマイでは英語があまり通じないからと聞いていたが、殆ど、英語で事足りる。僕は結局、用意したタイ語の本は、空港で最初に使って以来、まったく使用していない。「有り難う」の「コップ クーン カップ」と挨拶の「サワディー カップ」くらいは言うが、それ以外は英語で不自由しない。所詮、僕がまわるような所は観光客が行く所で、あちらが英語を用意している。

 夜中の1時をまわると、店の天井の電灯が消された。でも、お客を追い出すふうでも無い。一応、営業はお終いらしいが。
 Aさんのおしゃべりが途切れるタイミングを待って、僕とFさんは店を出る事にした。別れる時、Aさんをはじめ、何人かとハグをして、改めて海外を実感する。
 Fさんにはエンプレスホテルの部屋番号を伝えて別れる。

 夜中の1時をまわって外国で街を歩いている、それもお酒を飲んで。一時の僕なら考えられない無謀な行為だが、まあ、慣れてきたという事だろうか。それでも事件に巻き込まれないようにと、へんなのが近づいてこないか、周りを確認しながらターペー門から堀の外側の道まで出る。ここからならエンプレスホテルはまっすぐ南だ。英語の数字がうまく聞き取れない、発音できていないようなので、僕は50バーツ札一枚を手に持ち、トゥクトゥクを停める。「エンプレスホテル、50バーツ。」と言って50バーツ札を見せると「ノー、60バーツ。」「50バーツ。」 しばらく運転手が考えて、「OK。50バーツ。」と言ったので乗り込んだ。この区間、微妙な所らしく、50バーツか60バーツかの境目みたいだ。
 Nap Tourで貰ったフリーペーパーにトゥクトゥクの値段を調べた物が載っていたが、それを僕の独断で判断すると、旧市街等、運転手がよく知っている所は比較的安く、旧市街から新市街等を言うと高くなるようだ。実際の距離に比例しているのではなく、運転手さんの感じる距離に比例しているのでは無いかと感じた。(違っていても責任は持ちませんが)
 だからエンプレスホテルのように新市街の端の方に旧市街から行くと60バーツくらいになるようである。まあ、ホテルの名前だけで「こいつ、金持ちだ。」と思われるようなホテルですから、そのせいかも知れませんが。


 ホテルのフロントで鍵を受け取る。ルームサービスも24時間しているホテルなので、門限の心配はしていなかった。ホテルの部屋にはいる頃には2時をまわっていた。荷物を置き、服を脱ぐと、そのままベッドへ入り、眠りについた。







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