アユタヤツアー その1


 目が覚めて時計を見ると4時過ぎ。およそ10時間、ぐっすり眠ったようで、かなりすっきりした目覚めだ。しかし、油断するとまた熱がぶり返しそうな、危うい感覚が残っていた。すぐに下着を着替え、トレーナーとズボンを着る。上にベストを羽織ると、部屋を出た。
 今日はアユタヤへの日帰りツアーを申し込んである。朝の6時50分に迎えに来るとの事であったが、昨日からまともに食べていない為、出発前に何か食べておかないといけない。近所にコンビニがあるだろうと思い、エレベーターで1階に降りる。ロビーに出ると、警備員さんが机に座ってノートを書いていた。僕に気付くと、「Hi」と挨拶をしてきた。僕も挨拶を返し、「イティ イズ コンビニエンスストア ニア ヒア?」と聞いてみたが、全然通じなかったようで、警備員さんが席を立ち、フロントの人を呼び出した。
 「この辺で食べ物を買えるお店が無いか?」と聞くと、「周りには沢山の店がありますが、時間が早すぎます。」との事。コンビニエンスストアの事がうまく伝わらない。仕方がないので、自分で探す事にして玄関に向かうと警備員さんが玄関の鍵を開けてくれた。裏の駐車場も開いている時には人が必ずいるし、セキュリティはしっかりしていて、安心できる所である。

 表に出るとまだ暗い。まあ、時間が時間である。バッポンの方にはコンビニがあるのではと思って歩き出した。しかし、すぐにセブンイレブンがあった。中に入ってサンドイッチとオレンジジュースを買う。サラデーン・コロネードに向かって夜明け前の街中を歩く。ここで僕は、ガイドブックにも、どこのサイトにも出ていないものを見た。道路を掃除している人がいるのだ。服装はバラバラだったが、背中に番号の入ったベストを着ている。考えてみれば、毎晩、屋台が出ていろんな人が歩きながら物を食べているのだから、もっと汚れているのが本当なのかもしれない。でも、こうやって夜明け前に掃除をしている人達がいるおかげでそれ程汚くならないんだろうな〜と思った。少し違ったバンコクを見た気がした。

 サラデーン・コロネードの入り口まで帰ってくると、中から警備員さんが見つけてくれて鍵を開けてくれる。自分の部屋に帰ると、ベッドに座り、布団を掛けてサンドイッチを食べる。しかし、ハッキリ言って、おいしくない。変に甘いし、切り口の所だけしか具が入っていない。9割以上はパンだけなのだ。オレンジジュースは甘すぎて、水を飲みながらでないと飲めない。まあ、それでもパンだったので、そこそこお腹は落ち着いた。

 6時過ぎまでベッドでうだうだと過ごし、身支度にかかる。パスポートや航空券、パソコンをセーフティーボックスに入れてロックする。一応の用心として、全部のボタンを指でなでる。いつもはホテルに置いている荷物をまるごと盗まれても日本に帰る事が出来るよう、パスポートと航空券、現金とカードは必ず持ち歩いていた。ただし、スリに遭わないようにそれなりの処置をしての事だが。しかし、このサービスアパートメントは安心できると思い、セーフティーボックスに預けていく事にしたのだ。

 早く降りても待たされるだけだろうから、5分前に降りれば充分だろうと思って、時間までテレビ(NHKを見る事が出来る)を見ていて、6時45分、ロビーに降りた。予想に反し、すでに女の人が待っていて、すぐに声をかけてきた。
 フロントにキーを預ける。4時にコンビニの事を聞いた女の人が対応に出て、タイ語で旅行社の女性に何か話しかけた。やりとりが終わると、一緒に玄関を出ながら、「フロントの女性が、あなたが今朝、フルーツが食べたいと言って店を探していたが、時間が早すぎて開いていなかっただろうから、途中でフルーツを買える所があったら、停まってあげてと言っていましたが、どこか寄りましょうか?」と日本語で言ってきた。いや、フルーツではなく。フードと言ったつもりだったんだが・・・・。食べ物を買いに行って、セブンイレブンで買ったので必要ないと伝え、迎えにきていたワゴン車に乗り込む。先に女性が一人乗り込んでいた。次のホテルに向かい、そこで数人乗せ、5分ほど走ってバンコク市内の大きなホテルの駐車場へと着いた。「アユタヤ行きは黄色のバスです。すぐにわかります。」と教えて貰い、しばらく駐車場で待っていると、半分ぐらい人を乗せた黄色のバスが駐車場に入ってきた。


 パンダバス、日本語定期観光と日本語で書かれている。車内は3列シートで、ひとつの座席は広かった。乗り心地はなかなかいい。
 僕を含め、数人をホテルの駐車場で乗せると、バスはアユタヤに向かって出発した。





 ガイドの男の人が挨拶をして、今日の行程を説明する。バスにはアユタヤからの帰りがクルーズの組とバスでそのまま帰る組が乗っていた。
 行程は、バンパイン宮殿 → ワットヤイチャイモンコン → ワットマハタート → エレファントキャンプ → ワットプラシーサンペット → クルーズ乗船 ランチ → バンコク市内リバーシティ船着場 であった。
 日本語観光なので、当然、日本語をしゃべるガイドさんだ。確かに日本語が上手だが、時折、発音がわからない時がある。
 僕は帰り、クルーズで帰る組なのだが、「クルーズの方は、象乗り好きですから。」と何度も言っていて、(別に象乗りが好きかどうかなんて、聞かれなかったがな〜)と内心思っていたが、何度目かにやっと気がついた。そう、「象乗り付き」なのだ。エレファントキャンプで象に乗れるとの事。しかし、チェンマイのトレッキングで1時間も象に乗って川を下った僕としては、いまさら街中で10分ほど平坦な道を象に乗ってもな〜っと思っていた。やがてバスはバンパイン宮殿の駐車場へと入っていった。
 ここは何代目かのタイの王様が気に入った別荘らしく、初めは小さな建物があっただけだったのが、だんだんと立派になっていったのだとか。実際に使用されている為、建物の殆どは立ち入りが出来ない。
 入り口を入る時、民族衣装を着た女の子が立っていて、横を通る時に写真を撮っていた。気に入ったら、後で買って下さいとの事。入り口で金属探知器を通り、服装チェックを受ける。王族に対する敬意は絶対のようである。





 行けに浮かぶ黄金に輝く建物。敷地内の花壇は丁寧に手入れをされており、美しい風景が広がる。
 ここを作った王族の方がヨーロッパ建築を気に入られていたとかで、ヨーロッパ形式の建物や彫刻もあり、かのダイアナ妃も泊まられた事があるとか。










 こんな植木も。他にもウサギ等があり、結構、お茶目な感じで、歩いているだけでも楽しかった。







 半日で5カ所を回る為、1カ所でそんなにゆっくりしている時間はない。非常に綺麗な宮殿だったので、もう少しゆっくりしたかったというのが本音であるが、まあ、仕方がない。
 出入り口の近くまで戻ってくると、3人ほどの女の子が声をかけてくる。「オコトマエ、オコトマエ、コレ、コレ。」初めは何の事かと思ったが、「男前」の事である。入る時に撮った写真を飾りの額縁に入れてこちらに示している。一人旅の為、自分の写真はあまり撮れないので、記念に買った。土産物屋を覗くがこれといったものは無い。地名の入った帽子が欲しかったが無かった。「プーケット」なんてのもあったが、ここでプーケットはな〜という感じであった。
 みんながバスに戻ると次の目的地、ワットヤイチャイモンコンに向かって出発した。途中、昔、日本人村があったという所を通り、ガイドさんが紹介してくれた。日本人以外にも色々な国の人が住んでいたらしいが、ミャンマーとアユタヤ王国の戦争が始まった時に外国人達はここから離れていったのだとか。
 やがてバスはワットヤイチャイモンコンの駐車場へと入っていった。





 中を案内して貰う。これはアユタヤの王が、ミャンマーとの戦争に勝利した時にその記念に建てたとの事。この塔の前にあるお堂の中には象に乗って戦うアユタヤの王とミャンマーの王の壁画がある。







 これはチェンマイのドン・スティーブ寺院の所に書いたが、自分の生まれた曜日の仏様に油を注ぐもの。左端が日曜日で始まる。右端に2体、他と離れておいてあるが、これは水曜日の午後と日曜日の午後らしい。水曜日は周の真ん中の為、午前と午後に分かれているとの事。ちなみに午前と午後の分かれ目は12時と0時ではなく、午後6時と午前6時である。







 一通り見回ると、駐車場の近くにあるおみやげ屋さんを覗きに行った。釣り鐘型の鈴が売っていたのでひとつ買おうと思い、大中小のどの大きさにしようかと見ていると、隣の男性のタイ人が鈴を振って音を聞き比べていたので、僕もそれにならい、いくつかの鈴を聞き比べ、中の鈴を選んだ。店の人を捜す為中に入ろうとすると、横にいたタイ人の男性が手を伸ばしてきた。この人、お店の人だったのだ。150バーツを支払い、バスに戻る。
 この後、バスは、木の根に仏像の頭が入っている事で有名な、ワット・プラ・マハータートに向かう。









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