帰国日


 目が覚めると、テレビをつけてNHKを見る。パソコンを立ち上げ、メールチェックと何通かのメールを出し、荷物をまとめる。忘れ物が無い事を確認すると、キーを持ってフロントへ。ルーム係がミニバーの使用状況を確認し、インターネットの使用料を含め精算してチェックアウトする。
 荷物を担いで、明るい日差しの中、タニヤ通りに向かって歩き出した。バンコクに来た日、あれほど重たかった荷物が、びっくりするくらい軽い。初日もこれくらい元気だったら、充分歩けたのにな〜と思いながら、タニヤ通りの西端、「酒の店」へ入った。ガイドブックによると定食があり、10時から開いているとの事。時間は10時40分頃だったので、大丈夫だろうと思ったが、店内は準備中に近いような感じであった。しかし、店の人は「どうぞ」と言って中に入れてくれた。荷物を降ろしてカウンターに座ると、すぐにメニューが出てきた。アジフライ定食を頼み、醤油をかけて食べる。みそ汁も付いており、米も日本と同じ、短粒米だ。みそと醤油の味が嬉しい。もうすでにタイ料理を食べる気はまったく、なかった。

 食事をすませ、サラデーン駅からBTSに乗る。目指すはトンロー駅だ。帰国の飛行機は22時55分発なので、一日、時間はある。




 BTSのサラデーン駅からタニヤ通りを望む。ご覧の通り、日本語が氾濫している。





 サイアム駅で乗り換え、6つ目がトンロー駅だ。BTSは高架鉄道なので、モノレールのように車内は狭い。こんな大きな荷物を担いで乗っていると、さぞかし周りは迷惑だろうなと思いながら立っていた。
 トンロー駅で降りるとソイ49を目指す。このあたりはソイが結構長いので、軽トラックの荷台に座席をつけたシーロムという乗り物がソイの中を走っている。ソイの入り口にある乗り場でたむろしている運転手が声をかけてくるが、歩く事にしていたため、手を振ってソイを北へと入っていく。結構、車通りが多く、途中からは渋滞して、歩いている方が早いような状況になっていた。15分程歩くと左手に病院が見えてきた。そして右手にはお目当ての「Dr.フィート」が。看板は日本語で書いてあるので、すぐ分かる。タイに来て、マッサージ三昧と思っていたが、実際にはワット・ポーに行っただけだ。最終日にもう一つと思っていた僕は、タイマッサージではなく、ここの「台湾式足つぼマッサージ」を選んだ。痛いらしいが、効きそうな気がするのはもちろんだが、カルテをつけて、悪い所が分かるという事が一番の理由だった。
 中に入ると、女の子が英語で対応してくれて、すぐに奥に声をかけ、日本語をしゃべる若い男性が出てきた。30分の足つぼマッサージと30分の全身マッサージで300バーツ。椅子に座り、靴下を脱ぐ。少し歳を取った男性が出てきて、足下に座る。足のつぼを日本語で解説した絵を僕に渡すと、左足からマッサージを始めた。触っているのがどのつぼか分かるので面白いのだが・・・最初っからめちゃくちゃ痛かった。ぎぇ〜っという感じだ。消化器官は激痛が走る。やめてくれ〜!と叫びたいのを我慢しながら苦痛に顔をゆがめていると、にっこり笑いながら、「イタイ」と日本語で聞いてくる。しかし、すでに言葉は出なかった。
 激痛に耐えた30分が終わると、2階に上がり全身マッサージを受ける。特にして欲しい所を聞かれたので、肩と腰を言った。特に右肩がつらいと言うと、うつぶせに寝て最初に右肩を押して、びっくりしたように、「カタ〜イ!」と日本語で言った。
 マッサージが終わり、最後にお茶が出る。椅子に座ってお茶を飲んでいると、マッサージをしてくれた人がカルテを持ってきて、僕の悪い所を教えてくれる。「カンゾウ、コシ、カタ、メ。」と日本語で足の形を書いたカルテにつけた印を指さす。
 しかし、激痛が走った所が悪いんだと思っていたが、そうではないようだ。消化器官は多分、弱っていたと思うので、激痛がしたのはそのせいだろう。しかし、目とか腰の所を押した時には痛みは無かったのだが。
 300バーツを支払い、荷物を担いで外に出る。帰りは道も空いているようなので、走っているシーロムを止めてソイの入り口まで頼む。トンロー駅はソイを出て少し歩かなくてはならないが、シーロムはソイの中だけで、外に出ると料金が高くなるとガイドブックに書いてある。「30バーツ」という事で話がまとまり、荷台の座席に荷物を載せ、僕は助手席へと座る。走りながら運転手が英語で、「どこまで行くのか。」と聞いてくる。BTSに乗って、チェットロムまでというと、ソイを出て、トンロー駅まで送ってくれた。20バーツ札2枚を渡すと、ポケットを探り10バーツのおつりを探す。初めに30バーツと言っていた場所より遠くまで運んで貰い、また、この運転手、乗っている間も気さくに色々と話をしてくれたので、40バーツ、渡すつもりでいた。いらないと身振りで示すと、満面の笑みで「Thank you!」と言って、階段を上がる僕に手を振って送ってくれた。
 トンロー駅からチェットロム駅に向かう。特に目当ては無かったのだが、ガイドブックを見ても、この荷物を持ってうろうろ出来るような所はあまり無かった。あちこちのお店を少し覗いた後、僕はガイドブックに載っていた、あるお店に行ってゆっくりする事にした。



 これがそのお店。そう、スターバックスだ。会社の人間なら、僕のスターバックス好きは知っているから、タイに行ってまでと思うかも知れない。チェットロム駅から南に歩いて10分かからないくらいだ。







 このお店、一軒家(といっても、日本の感覚では無く、結構、大きい。)を改造してまるごと店にしているとか。中に入ってコーヒーと抹茶ロールのようなケーキを買うと、入り口近くの席に座りパソコンを広げる。お店の奥でもパソコンを広げている白人がいて、なかなか居心地の良い店だ。旅行記を書きながら、改めてLet’s noteのバッテリーの保ちの良さを実感する。
 ゆっくりと過ごした僕は、再度、おみやげ屋を覗くべく、チェットロム駅の北側のショッピングゾーンに行ったが、もう、そんなにする事は無かった。時間は17時過ぎ。僕はもう、空港に行く事にした。歩道で車の来る方を見ていると、向かい側車線から若いタクシーの運転手が声をかけてきた。待っているタクシーと声をかけてくるタクシーは相手にしない、とここまで来たが、もう面倒だった。手を挙げるとすぐにUターンをして僕の前につける。助手席のドアを開けて「エアポートまで」というと、明るい顔で「OK。OK。」と言って後ろの座席を指さす。後ろに乗ると、すぐに車をが走り出す。が、この運転手、メーターを動かさない。「メーター」と言うと、「Why?」と言ってくる。「今は渋滞している時間だ。」と言う。「いくらで空港まで?」と聞くと、「いくら払う?」。う〜む、なかなか。最後にあたったかと思いながら、「ハイウェイ代、空港使用料、すべて含めて300バーツ」というと、「それは渋滞していない時の金額だ。もっと。」と言う。「じゃ、350バーツ」と言うと、「OK。400バーツ、払って。」と言ってくる。50バーツ、日本円にすれば150円にもならない。50バーツ、余分に持って帰った所で日本円に換金するわけでもないし、面倒くさいが先にたっていた。「全部込みか?」「すべて込みだ。400バーツで全部だ。」との事なので、OKした。運転手は次の交差点で右に曲がると、訳の分からない道を走り始めた。どこを走っているやら、どっちに向いているやら分からない。やがて広い道に合流すると、目の前にハイウェイの入り口があった。ハイウェイは車が多いものの、快調に走る。運転手が「飛行機は何時だ。」と聞いてきた。「22時頃だ。」「じゃ、時間がまだある。女に行かないか。」「いや。いらない。」「じゃ、マッサージはどうだ。」「いらんから、とにかく空港に行って。」と言うと、笑いながら、「OK、OK。」と言ってラジオをつけた。
 やがて空港に近くなってくると、「どちらのターミナルだ。」と聞かれた。どちら?そういえばターミナル1とターミナル2があった。しかし、どっちか分からない。運転手は、「OK。航空会社の表示の前を通るから、チェックしろ。」と言って、エアポートに入っていった。しかし、ANAの表示は見つけたものの、実はどっちか分からなかった。到着した時にターミナル2だった事を思い出したのと、時間が早く、空港の中をうろつく気でいたので、間違ってても大差ないわと思い、「ターミナル2だ」と伝えた。
 ターミナル2の端で降りると、ANAの表示を見つけた。カートに荷物を積むと中に入る。中央にインフォメーションを見つけ、ANAのチェックイン時間を聞く。21時30分との事。まだ18時だ。
 とりあえず夕食を取る為に上の階に上がる。ピザを見つけて夕食を済ませると、カートを押しながら空港の中をうろついた。
 ふっと見つけたのが・・・・


 なんと、この空港、11bのワイヤレスLANが整備されているのだ。ただ、アクセスに必要なカードをどこで買えばいいか、分からない。デジカメでこの写真を撮って、売店で聞くと、「中のお店だ。」と教えてくれた。




 僕の英語の読解力はたいしたことが無いので、よく分からなかったが、出国前のロビーでも使えるんではないだろうかと思ったものの、よく分からない。
 待合室でチェックイン等の状況が表示されているテレビ画面が見える所に座ると、のんびりと画面を眺めて時間を過ごした。今回は本も持ってきていない為、本当にやる事が無い。パソコンは中に入ってからネットにつなぐ用に置いておく事にした。



 20時45分、予定より45分早くチェックインの案内が出た。早々に荷物を持って出国ゲートに向かう。ちなみに、出国前に空港使用料500バーツを支払って、その証明書を持って行かないと、ゲートをくぐる事は出来ない。





 中に入って驚いた。まあ、マッサージがあるというのは聞いていたが・・・。




 これが空港の免税店?さながら商店街だ。今まで見てきた空港の中で一番大きかった。過去、どの空港でも僕は免税店は一通り覗いてきている。中にまで入らなくても、最低限、店の中は覗いてきた。しかし、今回、初めてすべての免税店を覗く事をあきらめた。多分、ターミナル1の真ん中くらいまで行ったとは思うが。
 デジカメの写真を頼りにワイヤレスLANのアクセスカードを売っている店を探す。
 やっと見つけたカードは250バーツで60分の接続が可能だった。






 途中で射撃で一緒になった男性と会った。その人は僕より1時間早い飛行機で帰るとの事で、出発ゲートに向かう途中だった。一通り買い物を済ませると、22時前に僕も出発ゲートへと向かった。手荷物検査を済ませ、46番ゲートへ。コーヒーとクッキーを買って椅子に座ると、早速、パソコンを開いた。




 これがアクセスに必要なカード。裏にカードのIDとパスワードが書かれている。ブラウザを立ち上げ、自分の行きたいサイトのURLを入れると、IDとパスワードを入れる画面が出てきて、裏に書かれているID、パスワードを入れるとインターネットへのアクセスが可能になる。
 ちなみに最初に出てくる画面は英語なので、そのつもりで。






 43番ゲートの待合所にあるワイヤレスLANのアクセスポイント。46番からもここに繋がる。強さは充分だ。





 飛行機が15分程遅れて、出発は0時10分頃になるとのアナウンスがあった。しかし、インターネットに繋がるおかげで、退屈はしなかった。パソコンのバッテリーもまだ余裕だ。最後のメールを出し、ニュースサイトを覗いているうちに搭乗が始まった。パソコンを閉じると荷物に詰め、飛行機へと乗り込む。



 初めてのタイ訪問はこうして幕を閉じた。






Ruturn

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